再び活性酸素の話です。多くの疾患の発生原因に活性酸素がかかわっていると考えられているため、なぜ活性酸素がそのような働きをするのかということを理解するには、活性酸素が他の原子や分子とどうかかわる性質を持っているのかの理解が必要です。
人が生きて行くうえで酸素は欠かせませんが、それは主にミトコンドリアに存在する電位伝達系でATPという形で、生きて行くのに必要なエネルギーを作り出すところに直接かかわっているからです。この電子伝達系で酸素は4電子を受け取って(=還元されて)水となりますが、必ずしも酸素分子に電子が4個きちんと渡されるとは限りません。酸素分子が4個ではなく、1個、2個、3個と不完全に渡される(=還元される)ことがあり、この状態だと不安定なのでさらにを受け取ろうとするのです。この状態の酸素が活性酸素です。言葉を変えると、酸素分子が部分的に還元された(部分的に電子を受け取った)ものが活性酸素といえます。
たとえば、酸素分子が1電子還元されると(電子を受け取ると)スーパーオキシド(・O2-)となります。これは不対電子(・)を持った「フリーラジカル」に属し、スーパーオキシドアニオンラジカルと呼ばれることもあります。
さらにスーパーオキシドがもう一個電子還元されるとO22-ですが、これにH+が2個つくと過酸化水素(H2O2)となります。
さらにこの過酸化水素がさらにもう一個電子を受け取る(=還元される)ともはや酸素原子と酸素原子の間の結合は安定した状態でいることができなくなり、結合が切れて、ヒドロキシラジカル(・OH-)と水酸化物イオン(OH-)となります。
これらスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカルはすべて活性酸素の一種です。そして、スーパーオキシドとヒドロキシラジカルは不対電子をもつためにフリーラジカルです。また、ヒドロキシラジカルは活性酸素の中でも最強にラディカル(過激)で反応性が高いです。
ついでに、「一重項酸素」というものがあり、これも活性酸素の一種ですのでこの機会に説明します。一重項酸素は酸素原子同士が不対電子を二つずつ出し合って共有しています。普通ならこの状態で安定なのですが、酸素分子に限っては極めてユニークなのですが、この状態は実は通常の不対電子を二個持つ酸素分子(三重項酸素)の状態より不安定なのです。だから一重項酸素は通常の酸素より活性が高いので活性酸素に分類されます。